『POSE』シーズン2エピソード3"サバイバル術"の感想です。
※ネタバレ注意!
羽ばたくエンジェルと彼女に憧れるパピ
EP1から思ってたんですけどやっぱりこの二人はフラグ立ってたんだ…!!という予想があたってちょっと嬉しいです。姉弟のような二人もかわいいなと思ってたんですけど、カップルの彼女達も微笑ましいですね。
仕事のチャンスをつかむためにデートの約束をふいにしてしまうという展開はどこかで観たことがあるような…デイモンとリッキーのように別れてしまわないと良いけど…これからどうなっていくのでしょうか?待ちぼうけをくらってしまったパピがとてもかわいそうでしたが…結局許すという心の広さ…二人には幸せになって欲しいな。
「ヴェロニカ・ウェブみたい」とデイモンがエンジェルに言っていましたが、確かに似ているかも。大手化粧品会社の独占契約を獲得した最初の黒人スーパーモデルなんだそうです。
このエピソードの英語タイトルは"Butterfly/Cocoon"(蝶/繭)なんですが、蝶として羽ばたこうとしているエンジェルを表しているのかなと思いました。また、エレクトラが遭遇する“事件”にも関連しています。
エレクトラの危険な仕事
結局、困った時はブランカに頼るエレクトラ…こういうところが憎めないんですよね(笑)そして、ブランカを巻き込みたくないというマザーらしい行動を…!「アンタは私みたいに精神的にタフじゃないでしょ」という言い方だったような気もしますが、彼女なりの優しさなのかも。
そして、“ポール”に対しても「彼にも母親がいるはず…」と意外な思いやりを見せるなど、今回のエレクトラは色んな一面を見せてくれました。
結局“繭”にするという方法で死体を処理することになりましたが、そもそも警察がまともに取り合ってくれる世の中だったらそんなことしなくても良かったわけで…背負わなくてもよい罪悪感を背負ってしまわなければならなかったのはやはり理不尽ですよね…
最後にエレクトラはブランカと固く手を握り合い「外部に対しては団結して戦っていこう」と誓いますが、抗議活動にも参加するようになるのでしょうか?
ペパーミントが登場!
何といっても今回はRPDR S9クイーンのペパーミントがゲスト出演しました!一瞬誰か気づきませんでしたが、違和感なく溶け込んでいた気がします。
今回ペパーミントは売春客から殴られたにも関わらず、罪を着せられ刑務所へ行くことになってしまった…という辛いシーンを演じていました。
実は悲しいことにこうした事件は『POSE』から30年経った今でも無くなってはいません。
Black Trans lives matter
※ここからは暴力を含む、ショッキングな内容に触れますので、今は読みたくないなという方は飛ばしてくださいね。
Speak #IyannaDior’s name — all our black trans siblings’ names — just as much as we’ve been screaming yours. We love y’all. We show up for y’all. ROLL UP! Now show up for us. #BlackLivesMattter #iyannadior #girlslikeus pic.twitter.com/7t5M9qpmBW
— Janet Mock (@janetmock) 2020年6月3日
今回のエピソードを監督したジャネット・モックも言及していましたが、2020年6月1日にミネソタ州ミネアポリスで、Iyanna Diorという黒人トランス女性が十数人の黒人男性から激しく殴打されるという事件が起こりました。幸い命に別状はありませんでしたが…顔や腕が腫れ、唇の裏側が切れるなど多くの怪我を負い、病院に行くことに。
A Group of Men Attacked Iyanna Dior, a Black Trans Woman, in Minneapolis | them.
また、エンジェルを演じたインディア・ムーアはレッド・カーペットで、2019年9月までにアメリカで殺害された17人の黒人トランス女性の写真を身に着けて出席しました。
16人の写真を使ったイヤリングが出来上がった3日後、ボルチモア出身の17歳のトランス女性ベイリー・リーブスが殺害されました。そのため、インディアは彼女の写真を直接手に持っています。トランスジェンダーへの暴力という問題が差し迫ったものであることがうかがえるエピソードです…
現在、アメリカなどで黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴えるBlack Lives Matterを掲げるデモが起こっていますが、とりわけ黒人トランスジェンダーの人々は、白人の人種差別主義者*1だけではなくホモフォビア/トランスフォビアの黒人からも攻撃されるという厳しい状況にあります。
ドラァグ・アーティストが最近良くSNSで使っている"Black Trans lives matter"という言葉はそういった背景から登場したようです。『POSE』の世界よりは社会進出が進んだとはいえ、まだまだ悲劇は終わっていません…
長くなってしまいましたが、『POSE』を見るうえで是非知っていて欲しい現状だと思い、ご紹介しました。他にも、ここ最近でトランスジェンダーの人々が被害者となってしまった複数の痛ましい事件が起こっていますが、 今回は一部のみ載せています。
挿入曲
最後に、自分が気になったので分かる範囲で挿入曲を調べてみました。
・Bobby Brown『My Prerogative』-冒頭のボールシーン
・Janet Jackson『Black Cat』-エレクトラの仕事シーン
・Vanity 6『Nasty Girl』-ポールダンスのシーン
・Evelyn "Champagne" King『Shame』-死体の処理シーン
・Neneh Cherry『Buffalo Stance』-エンジェルの撮影シーン
・Pretty Poison『Nightime』-ブランカとエレクトラがバーで会話するシーン
『My Prerogative』は2004年にブリトニー・スピアーズがカバーしたことでも知られています。「Prerogative」は特権とか天賦の才能という意味なので、ボールで圧勝するエンジェルに当てはまる内容だと思います。
Evelyn "Champagne" King『Shame』は77年リリースなので少し年代が違うみたいですね。個人的に好きな80年代の音楽が多く登場するので、毎回楽しみです。
軽く感想を書くつもりが、ちょっと長くなってしまいました。来週はもっと短くまとめられたらいいな…
*1:他の人種からの差別もあるとは思いますので訂正しました