『アリー/ スター誕生』の感想です。
え、レディー・ガガ主演じゃないの?
いいえ、この映画は監督兼出演者であるブラッドリー・クーパーがメインです。
少なくとも映画を実際に観た私はそう思いました。
ツッコミつつ穿った見方ですので、大絶賛な感想が読みたい方はこの記事を避けることをおすすめします。
また、オリジナルの『スタア誕生』及びリメイク作品2作は観ていないため不勉強な部分があるかと思います。 そして、映画館で1度観ただけなので記憶違いがありましたら、先に謝っておきます。ごめんなさい。
※ネタバレ注意
“愛”がテーマ
まず、言いたいのがこれは「愛」がテーマの映画であること。
「普通の女の子が一夜にしてスターに!」
というのを期待している方…後半は寝るかもしれないです。
前半でほとんどその描写は終わっている。
この映画の時間のほとんどがレディ・ガガ演じるアリーとブラッドリー・クーパー演じるジャクソン・メインの「愛」の物語に裂かれている。
恋愛映画を期待していった方はきっと満足されたことだろう。
事実、私の前の座席にいた年配女性2人連れは、上映後「よかったよかった~」と満足気に出て行った。
しかし、私は無名の状態から世界的なスターになる…という所謂「ディーヴァのサクセス・ストーリー」が好きなため、それを期待していったところ肩透かしを食らってしまった。
(これは「スター誕生」というタイトルだけで判断してしまったこちらに非がある。)
普段、私は恋愛がテーマの映画は好みではない(コメディは別として)こともあり、退屈してしまったのは事実。
それでも、楽しめる部分はあった。
それはガガ様ことレディー・ガガが出演していたからだ。(この記事を書いている自分は極めてライトなガガファンです。)
レディー・ガガの歌う主題歌は最高
作中3か所で使用された『シャロウ』が良い曲なのは言うまでもないだろう。予告を観てあの曲に心を掴まれて劇場に足を運んだ方も多いのでは?
第76回ゴールデングローブ賞で主題歌賞を受賞したのも納得の出来。
また、冒頭でブラッドリー・クーパーの歌う『ブラック・アイズ』も良かった。
この映画のためにボーカルレッスンまで受けたクーパーの歌声は本職が歌手と言われても騙されそうなくらいの完成度だった。
ブラッドリー・クーパーとガガの歌声を聴くためだけに足を運ぶ価値は大いにあると思う。
ガガの演技については全てを絶賛できないけれど、バーでジャックの存在に気づいた時の表情はとても美しかったと思う。あんな素の表情を見てしまったらもっと知りたいと思うジャックの気持ちは分かる。
ジュディ・ガーランド、バーブラ・ストライサンドと名だたるスターが演じてきたこのポジションをガガが務めることは極めて自然だ。
というのもジュディもバーブラもLGBTアイコンとして大きな存在だからだ。
当初はビヨンセのキャスティングを予定していたそうだが、結果的にはガガで良かったと思う。
主人公アリーが働いているゲイ・バーにドラァグクイーンが多数出演しているというのもガガが演じているからこその設定だと思う。
(RPDRからはシャンジェラとウィラムが出演しているので要チェック!)
SNL(サタデー・ナイト・ライブ)に出演しているガガの姿は過去の彼女の姿と重なった部分も多かった。セルフ・パロディー的に歌って踊っている場面はちょっと笑ってしまったし、ガガファンは観に行って損は無いと思います!
(参考までに実際にガガ様がSNLに出演した際の映像。「セクシーなお尻」なんて歌詞は登場しません!↓)
さて、本題でもある“ブラッドリー・クーパー主演”とはどういう意味なのか。まずは彼の演じるジャクソン・メインことジャックについて触れましょう。
救われなかったジャックの魂
ジャクソン・メインことジャックはカントリー・ロックにおける大スターなのに、口下手で人が好く、ナイーブな人物として描かれています。
ハンサムでマッチョでとても魅力的です。
イメージとしてはキース・アーバンがもっと飾らなくなったような感じ?
でも、彼は精神的に深刻なものを抱えており、ドラックとアルコールの依存症なんですね。その原因は幼少時代にまで遡ります。
アリーと出会ったことで改善するかと思いきや、アリーが自分を見失い「魂の無い歌」を歌ったことで悪化。
歌手として成功していくアリーとは対照的にジャックのキャリアは低迷し、元々悪かった聴力もさらに悪化。
ついにアリーの授賞式で致命的な失敗をしてしまい、リハビリ施設へ。
回復し、アリーの元へ戻ったかと思いきや結局は彼女のためを思い、自ら命を絶ってしまいます。
脚本を書いたウィル・フェッターズが語っている通り、カート・コバーンの最後に影響を受けていることは明らかです。(妻もミュージシャン、自ら命を絶ったetc..)
ミュージシャンとしての生命は絶たれ、良き夫であろうとするも、それも許されず…
ジャックは孤独です。
彼の魂は結局、救われることなく終わってしまいます。
最後にアリーが彼の残した曲を歌って映画は終わるのですが、後味は良くない…
アリーは彼女なりに彼を愛してはいたのでしょうが、孤独なその魂に寄り添い続けることはできていませんでした。
作中、描写が無かったように感じたんですが、ジャックの聴力の悪化についてアリーは知っていたのでしょうか?
同じミュージシャンならそれがどんなに辛いことか分かるのでは?ジャックはアリーだけには隠していたんでしょうか。モ、モヤモヤする…
そして、アリーはどのくらい彼のドラック、アルコール依存症を深刻に捉えていたんでしょうか。
「リハビリ施設」に入ったからといって根本的な原因であるジャックの精神的問題は解決したとは言えないのでは…アリーなりに心を砕いていたような描写が欠けていたため、それも気になりました。
ああ、ジャック…
ジャックの顛末には数多のミュージシャンの悲劇的な死がよぎり、エモーショナルにならざるを得ませんでした。
作中で彼が魅力的に描かれれば描かれるほど彼が可哀想に感じます。彼が魅力的すぎるのも問題なんですけどね(後述)
アリーについての描写がおざなり
・ジャックが前もって忠告したにも関わらず、「魂の無い歌」を歌って派手な衣装、髪色へと変貌。
・初ツアーなのにいきなりマネージャーに無断でバックダンサーを出演させないという暴挙に出る。(ド新人なのに)
正直、アリーに共感できないんですけど…
成功してからのアリーは間違った道へグイグイ進むわ、ジャックの不安定さにも気づかないわで、急に「馬鹿な女」になってしまう。
そこに、「仕事に夢中になっていたから」というような理由付けや描写がないので、最後にドヤ顔で歌われても「恋愛脳が自分に酔ってるなぁ」としか感じなかった。(※個人の感想です!)
これはアリーについての描写不足が原因だと思う。
明らかに監督も務めるブラッドリー・クーパーの演じたジャックがストーリーのメインに据えられたことで、アリーについての内面描写が疎かになっている。
ブラッドリー・クーパーの見せ場が多すぎる
・リハビリ施設のプールで泳ぐシーンや、自宅に訪れたレズ(アリーのマネージャー)に応対するシーンなど、やたらと鍛えた半裸を見せる
・ドラッグキメる&泥酔シーンをじっくり見せる
・最後の死を決意する場面が長い
初監督作ということで気合が入ったんだろうけど、そんなに自分の見せ場ばっかり作らなくてもと思ってしまった。もっと削ってコンパクトにまとめられたはず。
演技は確かに見入ってしまう上手さがある。アリーの授賞式での失態シーンは笑いそうになったくらい。(ところであのシーンは失禁じゃなきゃいけなかったんだろうか…もっと他のパターンもあったのでは…)
鍛え上げられたボディもセクシーなのは分かる。サービスシーンとして捉えるべきなんだろうか。ただし、作中の濡れ場自体は多めだけど、そう過激でもない。
レディー・ガガを見に行ったつもりがブラッドリー・クーパーをじっくり見せられて困惑した。
私の感想はこの一言に尽きるかもしれない。
元々のオリジナルや他のリメイク版の脚本でもジャックがこんなにフューチャーされるんだろうか?
その他感想
観客がだたそこにいるだけの書き割り状態だったのも気になった点。ライブ感はあまりなかった…これは同時期に上映されていたのが『ボヘミアン・ラプソディ』だったので気になったのだろう。はなはだ酷な要求だったかもしれない。
チャーリーというアリーとジャックの愛犬が登場するのだが、めちゃくちゃカワイイ。エンドクレジットでも「チャーリー役:チャーリー」というような書かれ方をしていて笑った。
どうやらブラッドリー・クーパーの愛犬をそのまま出演させているらしい。
以上、『アリー/ スター誕生』の感想を好き勝手に語らせていただきました。
ブラッドリー・クーパー初監督、レディー・ガガ初主演と経験が浅めの2人のタッグだった本作。気になるところが多いのは当たり前なのかもしれません。
重ねて言いますが、劇中の音楽については文句なしです!
「ディーヴァのサクセス・ストーリー」が見たかった私は大人しく『バーレスク』を観ます!!本当にすみませんでした!!madaraでした!!
レディー・ガガ & ブラッドリー・クーパーの"Shallow"をiTunesで